ジーアイシーの田栗です。
第6回目は、最近多くのお問い合わせを頂いておりますMittell【ミッテル】と”身体拘束”についてです。
Mittellは身体拘束に当たるのか調べてみました。
身体拘束に対しての制度及び動向
身体拘束禁止規定
介護保険指定基準の身体拘束禁止規定(平成11年3月)
「サービスの提供にあたっては、当該入所者(利用者)又は他の入所者(利用者)等の生命又は身体を保護するため緊急やむを得ない場合を除き、身体 的拘束その他入所者(利用者)の行動を制限する行為を行ってはならない」
身体拘束を違法とした判例
医療現場:2008年5月本人の同意なしで身体拘束をするのは違法であるとの名古屋高裁が判決を下した。
国の対応状況
1998 年(平成 9 年)高齢者に対する身体拘束廃止の動き「抑制廃止福岡宣言」 「全国抑制廃止研究会」発足
1999 年(平成 11 年)厚生労働省から介護保険施設などにおける「身体拘束禁止」が省令
2000 年(平成 12 年)厚生労働省から「身体拘束ゼロ作戦推進会議」発足
身体拘束とは
身体拘束を定義する「スリーロック」という言葉があります。
スリーロックとは
- スピーチロック
「言葉による拘束」Speech lockすなわち、言葉によって利用者や患者の心身の動きを抑制したり、制限したりする行為を指します。具体的には、「〇〇してはいけません」「〇〇してください」など
- ドラッグロック
スピーチロックは言葉でしたが、今度は「薬物による拘束」です。内服により心身を拘束することを指します。
- フィジカルロック
物理的に身体の動きを制限することを指します。身体拘束と聞いてイメージしやすのが、このフィジカルロックだと思います。下記で説明する身体拘束11行為のほとんどが当てはまります。
身体拘束禁止先進国のデンマークなどでは近年、センサーによる抑制を定義する心理的抑制も議論されているようです。
「身体拘束ゼロへの手引き」に規定されている、身体拘束禁止の対象となる具体的な行為
- 徘徊しないように、車いすやいす、ベッドに体幹や四肢をひも等で縛る。
- 転落しないように、ベッドに体幹や四肢をひも等で縛る。
- 自分で降りられないように、ベッドを柵(サイドレール)で囲む。
- 点滴・経管栄養等のチューブを抜かないように、四肢をひも等で縛る。
- 点滴・経管栄養等のチューブを抜かないように、または皮膚をかきむしらないように、手指の機能を制限するミトン型の手袋等をつける。
- 車いすや椅子からずり落ちたり、立ち上がったりしないように、Y字型拘束帯や腰ベルト、車いすテーブルをつける。
- 立ち上がる能力のある人の立ち上がりを妨げるような椅子を使用する。
- 脱衣やおむつはずしを制限するために、介護衣(つなぎ服)を着させる。
- 他人への迷惑行為を防ぐため、ベッドなどに体幹や四肢をひも等で縛る。
- 行動を落ち着かせるために、向精神薬を過剰に服用させる。
- 自分の意思で開けることのできない居室等に隔離する。
身体拘束がもたらす多くの弊害
- 身体的弊害
外的弊害:身体拘束は身体機能の低下、圧迫部位のじょく創の発生など外的弊害をもたらす。
内的弊害:食欲の低下、心肺機能や抵抗力の低下など内的弊害をもたらす。
- 精神的弊害
被拘束者:本人には多大な精神的苦痛を与えるばかりか人間としての尊厳をも侵す。
親族関係者:家族にも大きな精神的苦痛を与える。自らの親や配偶者が拘束されている姿を目の当たりに罪悪感にさいなまれる家族は多い。
- 社会的弊害
介護・看護等に従事するスタッフの士気低下、施設の施設等に対する社会的不信・偏見
QOL低下により医療的処置を生み、医療費増などをもたらす
身体拘束が認められる例外と手続きについて
緊急やむを得ない場合とは
介護保険指定基準上では
- 切迫性:本人や他の利用者等の生命・身体が危険にさらされる可能性が著しく高い
- 非代替性:身体拘束その他の行動制限を行う以外に代わりになる介護方法がない
- 一時性:身体拘束その他の行動制限が一時的なものである
上記の3原則が当てはまった上で手続きでは、
- 「緊急やむを得ない場合」に該当することを施設全体として判断する。
- 本人や家族に対しての十分な説明と理解を得る
- 状況を常に観察検討し、要件に該当しなくなった場合には速やかに身体拘束を解除する
身体拘束に関する記録が義務付けられている
介護保険指定基準では、「緊急やむを得ず身体拘束等を行う場合には、その態様及び時間、その際の利用者の心身の状況、緊急やむを得なかった理由を記録しなければならないものとする」と規定されており、介護現場では記録を残すことが求められています。
現場の動向は?
平成28年度に公益社団法人全日本病院協会の行なった、「身体拘束ゼロの実施に伴う課題に関する調査研究」アンケート結果では、介護・医療の双方ともに身体拘束11行為は「理由を問わず避けるべき」との結果もあり、現場でも徐々に身体拘束ゼロへの認識が浸透しつつあります。また、多くの施設でカメラによる監視モニタ等を用いた監視等への忌避感が強くマットセンサー等については比較的容認する結果が出ています。
▲Mittell【ミッテル】
Mittellは身体拘束に当たるのか?
厚生労働省ではセンサーを使用することを身体拘束とは位置付けられておりません。しかし、センサーによる報知を受けてからどのように対応するかによって抑制行動するかが問題となろうかと思います。先に説明したスリーロックのスピーチロックを行うのではなく、報知があった場合には患者の行動をそっと介助することで、転倒・転落等の医療事故が防止できかつ、身体拘束ゼロの環境実現へ少し進むものだと考えております。